NHK放送文化研究所の「NHK文研フォーラム2022」では、テレビ番組のジェンダーバランスをテーマに2021~22年に実施した▲メタデータを使ったテレビ番組全般の登場人物の分析と、▲コーディング調査による夜のニュース番組の登場人物の分析、▲視聴者1,000人余りのWEBアンケート調査、という3つの調査の結果を報告し、2人の識者にゲストとして意見を述べてもらった。本稿はその採録である。ゲストからは、テレビに登場する人物の男女の偏りが人数だけでなく、年代、職業、番組内での役割、名前の表記の有無など質的な面に及び、それが繰り返されることで、性別役割の固定観念や分業意識を強化するリスクが指摘された。ジェンダーバランスを「気にしすぎ」ではないかという意見に対しては、背景にはチャンスの欠如や可能性の喪失のおそれがあることを考えるべきであり、今までが「気にしなさすぎ」たのではないかという問題提起があった。また、社会の実態とテレビの放送は相互に影響して現実を形づくっており、どちらが先かを考えるのではなく、車の両輪のようにとらえて変えていくことが必要なこと、さらに、メディアが自らを点検する一方、市民も参加して放送の今後のあり方を考え、これからの社会を築いていく手がかりにするためにも、継続的なデータの蓄積・共有の重要性が強調された。
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