抄録
2023年1月、イギリスの公共放送BBCは、重要な規範のひとつにかかげる「不偏不党」が、自らのコンテンツの中で実現できているのか、第三者による検証の結果を発表した。不祥事をきっかけに、取材規範の徹底を迫られたBBCが実施を決めたもので、第1回目のテーマは「税金、公共支出、国の借金」だった。検証を行った学識経験者らは、このテーマについて取り上げた1万1000点を超えるコンテンツを点検し、このうち1000点について詳細な分析を行った。分析にあたっては、可能なかぎり多種多様な意見が反映されているかが重視され、点検項目は正確性やデータの利用方法、インタビューの質問やそのトーンなどを網羅した。BBCは、政治・社会の分断が広がり、ソーシャルメディアで様々な意見が飛び交う時代を迎え、「偏向している」「公平でない」という批判を受けることが増えているが、報告書は、「政治的な偏向」は認められなかったものの、思い込みや認識のずれが散見され、それが不偏不党の実現を妨げていると結論づけた。