抄録
本稿は、2023年度からNHK放送文化研究所のホームページで連載している「調査報告 ジャーナリストたちの現場から」の第6回に、一部加筆・修正を加えて再録したものです。
メディア環境が著しく変化する中、健全な民主主義を支えるために、ジャーナリストやメディア組織は、みずからの変えるべき部分をどう変革し、守るべき部分をどう維持すべきなのか。私たちはNHKに限らず、国内のマスメディアが発信するニュースや番組の取材・制作現場に目を向け、ジャーナリズムの現在形と将来を模索する姿をシリーズで伝えています。
今回は、関西テレビが制作した『ザ・ドキュメント 逆転裁判官の真意』というドキュメンタリー番組に注目しました。この番組は、YouTubeに公開後の再生数が100万回を超えるなど、視聴者から高い評価を受けています。本稿では、取材制作の経緯や番組で伝えたかったことなどを制作者にインタビューしました。制作者が、関連する別の報道・番組もあわせて最も伝えたかったのは、捜査線上に浮かんだ容疑者を犯人と決めつけ、虚偽の自白を強要するなど「有罪推定」とも言うべき刑事司法が抱える構造的な問題と、そうした警察・検察からの情報を何ら検証することなく、そのまま伝えることが多い今の犯罪報道に対する疑問でした。無実の罪に問われる人が今もなくならない現状に対し、メディアはどう向き合うべきなのかを考えます。