抄録
データの新たな活用の可能性を探るとともに参加者のスキル向上や人材交流を促進することを目的として、NHK放送文化研究所とNHK放送技術研究所は、分野の異なる研究を行う研究者が集まる社内データソンを実施した。使用したのは「メディア利用の生活時間調査2021」のデータである。計16名の研究者と外部プログラマー3名が3チームに分かれ、それぞれテーマを設定して分析した。
子育て世代のメディア利用に注目し、視聴者に向けた情報発信を探ったチーム、全対象者のデータを一覧できるよう可視化し、気づきを得たチーム、経営への提言に向け、動画のライブ配信に注目したチームと、専門領域の異なるメンバーとの協働によって、同じデータでも三者三様の分析が展開され、多様な知見が得られることが確認できた。また、ふだんと異なるメンバーとの議論を通じて新しい気づきを得たなど、ポジティブな感想も得られた。同時にスケジュール、テーマ設定、データ分析スキル、アイデアや分析結果の生かし方などいくつかの課題も明らかになった。こうした課題を改善しながら、NHKの研究や調査データをより社会に役立てていく手立ての1つとして、データソンの活用を今後も進展させていきたい。