放送研究と調査
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大学スポーツとメディア
~スポーツ分野におけるメディアの公共的役割~
斉藤 孝信
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2025 年 75 巻 12 号 p. 32-61

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抄録
本稿では「スポーツ分野におけるメディアの公共的役割」の研究の一環として、「大学スポーツ」とメディアの関係を取り上げる。

大学スポーツがプロスポーツや高校スポーツに比べて放送される機会が圧倒的に少ない現状を踏まえ、果たして大学スポーツの持つ「青少年の健全育成」などの公共的価値と、テレビ局が果たすべき「国民のニーズに応えて、豊かで健全な娯楽を提供する」公共的役割の間に共通点は見いだせるのか、双方の価値実現のためにどのような協力ができるのかを考えるのがねらいである。

正月に放送されている箱根駅伝中継は、毎年20%を超える世帯視聴率(ビデオリサーチ・関東)を記録し、テレビ局は国民・視聴者のニーズに応えると同時に、CM収益も獲得できている。競技団体としても放映権料などの収益で選手育成などを実現している。つまり、競技団体と放送局にとってウィンウィンの構造になっているのである。

一方で、認知度や人気の低い多くの大学スポーツは国民・視聴者のニーズが弱く、テレビ局に扱われづらい。こうした状況で、大学スポーツ側は自力のネット配信で認知度向上を目指しているが、大会の主催権や放映権を持たない大学スポーツ協会は、魅力的なコンテンツ配信を実現できず困難に直面している。

今後、テレビと大学スポーツが共有しうる公共性のキーワードとして、メディア側、大学スポーツ側、識者のそれぞれから「地域性」というポイントが示された。実際に、地域密着で収益化に成功した大学もある。各大学による地道な取り組みで「地域のニーズ」を高め、ローカルメディアによる放送につなげられるかが、当面の注目点といえる。
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© 2025 NHK放送文化研究所
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