抄録
2025年の参議院選挙で、テレビ各局は従来の選挙報道を見直し、事前報道の充実やファクトチェックの強化に取り組んだ。前年の兵庫県知事選挙では、投票の際、SNSや動画サイトの情報を参考にしたと答えた人がテレビを参考にしたという人を上回り、「テレビは有権者の判断に役立つ情報を届けていないのではないか」と指摘された。また、これまで重視してきた「量的公平」から「質的公平」へ転換を図るべきだとの声も上がった。見直しはこれらを背景にしたものである。
では、テレビは選挙報道をどのように見直したのであろうか。本稿はNHK・民放の夕方と夜の11番組を対象に量的な内容分析を行い、前回の参議院選挙と比較して、報道量や報道内容がいかに変化したかを検証したものである。分析の結果、選挙期間中の報道量は、特に民放の夕方の番組で顕著に増加したことがわかった。また、報道内容を見ると、複数の番組が第一声の演説内容を分析して報じるなど、伝え方がより多様になったことが確認できた。さらにSNSなどを中心に数多くの偽・誤情報が出回る中、前回の選挙では見られなかったファクトチェックの取り組みが各局に広がったことも見て取れた。「質的公平」については、選挙戦の焦点の1つになった参政党をめぐる報道に着目し、考察を深めた。
一方、こうした選挙報道の見直しを、有権者はどのように受け止めたのか、そもそも有権者の判断に役立つ情報とは何かといった点は、引き続き課題として残った。