抄録
本稿は、放送100年の節目にテレビと視聴者の関係の変遷をNHK放送文化研究所(文研)の調査から振り返るべく、2025年3月18日に配信された「NHK文研フォーラム2025」のシンポジウムを採録・再構成したものである。1953年の本放送開始以来、テレビは「知りたい」「楽しみたい」という視聴者の欲求に応え、報道・娯楽・家族の団らんの中心として社会に根づいてきた。高度経済成長期には民主主義や豊かさを体現し、1980年代以降は報道ニーズの高まりに応えて影響力を高めた。一方、個人視聴や録画視聴の普及により視聴スタイルは多様化し、特にインターネットの登場以降、テレビの役割は社会の中で急激に相対化した。近年、若年層の「テレビ離れ」が言われているが、家族をつなぐメディアとしての価値や、受動的であるがゆえに広い視野を提供する特性は再評価されている。今後は、テレビにしかできない役割を見極め、老舗メディアとしての進化が求められている。