抄録
2025年3月19日に開催された「NHK文研フォーラム2025」のプログラムCでは、「避難の後押し」をテーマに、災害時の放送による呼びかけが実際の避難行動につながるためには何が必要かを多角的に議論した。
近年、頻発する豪雨災害や地震などの自然災害に対し、放送メディアは「命を守る情報」をいかに届けるかを模索してきた。フォーラムでは、避難行動を妨げる“正常性バイアス”への対応、「呼びかけ」の口調の効果、地域に根ざしたアナウンサーの役割、スマートフォンやアプリとの連携、行政との協働など、放送の果たすべき役割が多岐にわたることが明らかになった。
特に「2.5人称の防災」や「自分事から自分たち事へ」といった概念は、災害を“誰かの問題”ではなく“私たちの問題”として捉える視点を提供し、放送が単なる情報伝達手段ではなく、行動を促すコミュニケーションの媒体であることを再認識させた。
“放送100年”の節目にあたる本年(2025年)、メディアは「伝える力」だけでなく「受け取る力」を育む責任を持ち、平時からの防災意識の醸成、避難所環境の改善、命を守る社会の構築に向けて、次の100年を見据えた役割を果たしていくことが求められている。