抄録
猛暑や洪水など気候変動の被害が世界各地で深刻化し、実効性ある対策が急務となる中、いまやメディアにも報道・番組の発信を通じた貢献だけでなく、みずからも事業者としてCO2削減に取り組むことが求められている。
欧米のメディアでは、西暦2000年代から番組制作過程で発生するCO2の排出量を算定し、削減する取り組みが広がり始めた。その後、パリ協定が採択された2015年以降には、気候変動の危機的な状況を背景に、パリ協定と整合する踏み込んだ対策を始めるメディアの動きが国内外とも顕著である。
気候危機へのメディアの向き合い方を探るシリーズの第5回となる本稿は、国内外の映像メディア業界や放送事業者のみずからの気候変動対策の動向を整理するとともに、取り組みの柱である番組ごとのCO2排出量の見える化と削減の具体策に光をあてる。
NHKで気候変動対策を推進している環境経営事務局の職員が、国内外の先行事例を参考にしながら、番組制作でのCO2排出量の算定と削減を模索してきた経過を報告する。2025年に放送中の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』での実践例をはじめ、番組の制作現場における最新のテクノロジーを生かした省エネ策や、業務プロセスの見直しを伴う効率化の取り組みは、今後の映像メディア業界での対策を考えるうえで貴重な示唆を含んでいる。