抄録
本稿は、2025年10月にブルガリアで開催された世界の公共放送の経営層が集まる会議、PBI(Public Broadcasters International、国際公共放送会議)の概要と、現地で行った韓国KBS、台湾PTS、オーストラリアABC、そしてEBU(ヨーロッパ放送連合)のリーダーへのインタビューをまとめたものである。
インタビューでは、責任あるAIの利用方法、デジタル空間でコンテンツを見つけやすくする「プロミネンス」、視聴者との信頼関係の構築、公共放送の独立性と中立性の確保、持続可能な財源制度や財源の多角化、の5項目を中心にそれぞれの考えを尋ねた。
各局とも、AIは、もはや避けて通れないツールとして制作現場への導入を模索している様子がうかがえたほか、韓国や台湾では、AIの開発に取り組む国や公の研究機関へのデータの提供にも前向きな姿勢で取り組んでいることがわかった。デジタル空間でのプロミネンスについては、オーストラリアABCがプラットフォームと直接交渉をして、自局のコンテンツを視聴者が見つけやすくする方策を模索するなど一歩踏み込んだ対応をとっていた。
国際IT企業やプラットフォーム企業が力を増す中で、公共メディアの独自性を打ち出すための方策としては、各局とも一様に「ローカル」な視点が重要だとした。PTSは地元の目線のドラマが高い評価を得ているほか、オーストラリアABCは「ニュース砂漠」に対応し、あまねく視聴者に情報を届けることを大切にしている。財源については、各局とも厳しい状況を解消する特効薬がないことを認めつつも、民主主義を支え、社会の結束を促し、国のストーリーを伝え続ける、という公共メディアの価値を示し続けていくことが重要だとの指摘がなされた。