抄録
キレート官能基としてチオグリコール酸を化学結合したセルロース(SRY-Cell)を合成し,バッチ法とカラム法により水溶液中の鉛と銅の吸着挙動を調べた.鉛,銅共に250 μgを含む溶液100 mlにSRY-Cellを0.1 g加え,pHを1.2~10.8の範囲で変化させてpHによる吸着の影響を調べたところ,両元素共にpH 5.0以上でほぼ定量的に吸着された.流量を10~30 ml min-1の範囲で種々変化してカラム(78×16 mmポリプロピレン製にSRY-Cell 1.0 g詰めて使用)に通した時の吸着の影響を調べたところ,30 ml min-1まで吸着に影響を与えなかった.これらの結果より,溶液をカラムに流す際の流量は約15 ml min-1とした.カラムからの金属の脱着には,1 M HCl溶液15 mlを用い,5.0 ml min-1の流量で通液した.本吸着剤の鉛と銅に対する吸着容量はそれぞれ0.89 mmol g-1 0.64 mmol g-1であった.本吸着剤は安定で少なくとも20回の繰り返し利用が可能であった.本法を用いて水試料及び天日塩試料中の鉛と銅の定量を試みた.