抄録
耳下腺良性腫瘍は, 通常数cmの腫瘍が多いが, 中には巨大な腫瘍も報告されている。今回過去の報告の中でも一段と巨大な耳下腺多形腺腫症例を経験したため報告する。症例は50歳女性で, 10数年前より左頸部腫瘤を自覚するも放置し, 糖尿病性ケトアシドーシスによる意識障害にて救急受診した際に巨大な腫瘍を指摘され当科受診となった。左耳下部を中心に頭部より大きな腫瘤を認め, 顔面神経麻痺は認めなかった。頸部CT, MRIにて腫瘍内に太い血管像を伴う周囲浸潤のない耳下腺より発生する腫瘍を認め, 血管造影検査を施行したところ, 左顔面動脈が栄養血管であり, 腫瘍周囲に比べて内部の血流は乏しいことを確認した。耳下腺由来の良性腫瘍を疑って手術を施行した。腫瘍部分の皮膚を合併切除し, 腫瘍内に入る動脈を結紮すると, 容易に周囲組織から切離可能となり腫瘍が摘出できた。摘出腫瘍の重量は3.75kgであった。術後顔面神経麻痺を認めず, 現在再発を認めていない。