2007 年 56 巻 7 号 p. 547-560
疎水性イオンやイオノホアを添加した場合の脂質二分子膜(BLM)を介したイオン透過をボルタモグラム解析により検討した.疎水性イオンを添加した場合は,疎水性イオンのみが移動するのではなく,共存する対イオンとともに膜内に分配し,膜電位印加によりイオンが移動することを明らかにした.なお,移動イオンは系のイオン組成や印加膜電位で決まり,移動電流の大きさはイオンの水相|膜間での分配比と移動イオンの拡散係数に依存した.キャリヤー型のイオノホアを含む膜でも,イオノホアと錯形成するイオンのみが移動するのではなく,対イオンとともに分配して,膜電位印加に伴い両イオンが逆向きに移動することが分かった.更に,チャネル型のイオノホアであるグラミシジンAを含むBLMでも,対イオンの疎水性やイオン半径にイオン移動電流が依存することから,グラミシジンAと親和性の高いイオンとともに対イオンがチャネル内あるいは近傍に分配し,膜電位印加に伴いイオンが移動することを提案した.