分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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ビスマス(III)イオン共存下のアスコルビン酸還元によるリンモリブデン青形成に基づくリンの吸光光度定量
小林 寛和中村 栄子
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2007 年 56 巻 7 号 p. 561-566

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抄録

モリブデン青法は,水中のリンの定量法として広く用いられており,その反応は,モリブドリン酸を生成させ,アンチモン(III)共存アスコルビン酸や塩化スズ(II)などの還元剤を用いて還元し,リンモリブデン青を生成,発色させるものである.本研究では,新規な還元方法を開発するために様々な金属イオンを共存させて,アスコルビン酸による還元を検討した.ビスマス(III)イオン共存の場合に,室温で発色するリンモリブデン青(λmax 720 nm)が得られた.このリンモリブデン青中のビスマスを原子吸光分析法により測定したところ,リンに対してモル比で2倍量であることが分かった.ビスマス(III)イオン共存アスコルビン酸還元による定量操作を以下のように定めた.試料をメスフラスコ50 mLに取り,水で約40mLとする.硫酸酸性(1.73 M)モリブデン酸アンモニウム(8.3 g/L)硝酸ビスマス(ビスマスとして0.2 g/L)溶液5 mL,L-アスコルビン酸(50 g/L)溶液1 mLを加え,水で50 mLとする.室温で10分間発色させた後,波長720 nmの吸光度を測定する.この方法により,リン酸イオン濃度が0.01 mg/50 mL∼0.15 mg/50 mLの範囲で良好な直線関係が得られた.また,河川水のリンの定量への適応が可能であった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2007
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