日本皮膚科学会雑誌
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紫外線照射によるhairless mouse皮膚の色素沈着について
佐藤 壮彦
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1971 年 81 巻 6 号 p. 488-

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抄録

周知の如く哺乳動物の上皮には,基底層にあつてdopa染色で染め出されるメラノサイトと,それより高位にあつて鍍金法あるいはadenosine triphosphatase(以下ATPaseと略)染色で染め出されるランゲルハンス細胞との2つの樹枝状細胞が存在する.この両者の関係については,以前は後者はeffete melanocyteとする考えもあつたが,最近はむしろ両者はそれぞれ全く別の系列に属するものとする考え方が一般に受け入れられている.しかし後者の持つ機能については今日なお充分解明されるに至つていない.またReynolds(1954)はマウスの上皮に超生体染色で樹枝状細胞を証明し,これをamelanotic melanocyteと考えており,JarrettおよびRiley(1963)はマウスの尾部に,さらにRiley,伊藤らはマウスの背部上皮に非特異的エステラーゼ陽性樹枝状細胞を見出している.なお,また電子顕微鏡的検索では,吾々はhairless mouse背部上皮にメラノサイトあるいはランゲルハンス細胞のいずれにも属さない,いわゆるindeterminate cellの存在することを観察している.これらの種々の方法で観察される上皮樹枝状細胞相互の関連および異同,あるいはそれぞれの持つ機能については,なお解明されるべき点が多く残されている.hairless mouseは元来四肢末端,耳朶等には色素を有するが,躯幹皮膚は色素を欠き,活性メラノサイトを持たない.しかしながらKlausおよびWinkelmannはdimethylbenzanthracene(DMBA)塗布により,Epsteinら,Quevedoら並びに吾々は紫外線照射により速やかに色素沈着の生ずることを観察した.この際これらの上皮樹枝状細胞がどのような動き方をするかは,上記の問題の解明に資するところが大きいと考えられる.そこで著者はhairless mouseの背部皮膚に紫外線を照射した際の色素の出現の経過を詳細に観察するとともに,その間のメラノサイト,ATPase陽性樹枝状細胞,非特異的エステラーゼ陽性細胞の数的消長,形態的変化等について追求し,これらの関連について考察を加えようと試みた.

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© 1971 日本皮膚科学会
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