2009 年 58 巻 10 号 p. 865-872
ミネラルウォーターや食品原材料として使われる地下水の品質管理において,その起源や水質特性を理解することは極めて重要な課題である.静岡県御殿場市で採水している地下水を対象に水質及び水素・酸素安定同位体比を測定し,起源と流動の推定を試みた.電気伝導度や溶存イオン濃度は富士山山麓の湧水に類似する.また,水素・酸素安定同位体比からは富士山山麓斜面の降水を起源とすることが明らかになった.酸素同位体比と標高の関係から推定される涵養標高は1500 mから2300 mである.水理概念の検証を目的として実施した地下水流動解析では,富士山東麓の標高2000 m以上の斜面から採水地へ向かう地下水流れが予測され,水質及び酸素同位体比からの推定と整合的な結果となった.