分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
オンライン共沈濃縮法を利用する鉄鋼中クロムの吸光光度定量
渡辺 邦洋秋山 真理子四反田 功板垣 昌幸
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 58 巻 10 号 p. 873-879

詳細
抄録

オンライン共沈濃縮法を利用する,Cr(VI)と1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド(DPC)の反応に基づいた鉄鋼中クロムの定量法を検討した.本法では,鉄鋼のマトリックスである鉄をガス分離に使用されているテフロンフィルターチューブを用い,水酸化鉄の沈殿として捕集除去した.鉄を除去後,フィルターチューブを通過してきたCr(VI)を含むサンプル溶液は共沈剤であるLa(III)溶液と合流し,別のフィルターチューブで共沈濃縮した.この沈殿を塩酸で溶離し,DPCと反応させた.生成したCr(III)-DPC錯体の吸光度を542 nmで測定した.微量の鉄(III)の妨害は二リン酸ナトリウムの使用により除去された.濃縮時間10分間で作成した検量線は,Cr(VI)濃度0~200 ppbの範囲で検出限界は1.1 ppb,定量下限は3.4 ppbであった.10分間共沈濃縮を行うことにより,1時間当たりの測定回数は5回であり,濃縮無しに比較し感度が17倍向上した.本法を鉄鋼試料へ適用し,認証値とほぼ一致した良好な結果を得た.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2009
前の記事 次の記事
feedback
Top