分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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同種金属二核錯体系を用いるイオン交換体比色法によるppbレベルの鉄(III)イオンの目視閾値判定
水口 仁志篠田 靖子我妻 孝佳高田 雅之上條 利夫志田 惇一
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2014 年 63 巻 6 号 p. 515-523

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抄録

メチルチモールブルー(MTB)を用いる同種金属二核錯体システムと微細化した陰イオン交換樹脂を用いる濃縮法を組み合わせたppbレベルの鉄(III)イオンの目視いき値判定法を開発した.MTBは,一つの試薬分子に2個の金属イオンが結合できる構造を持つ.MTBに対して鉄(III)イオンが小過剰の条件では,鉄(III)イオン濃度の狭い範囲でML型及びM2L型錯体のモル分率が急激に変化し溶液の色に反映される.ここで生じる色の境界は,MTBの濃度だけで容易に制御できる.本研究では,ppbレベルの低濃度設定領域に対応するため,微細化した陰イオン交換樹脂を用いる濃縮法と組み合わせて高感度化を図った.遊離のMTBと有色の錯体化学種は,吸収スペクトルの深色移動を伴いながら弱酸性の水溶液から陰イオン交換樹脂に定量的に吸着し,その後,酢酸セルロース製のメンブランフィルターを用いて回収することで高感度化が達成された.さらに,錯形成反応に対して不活性な色素であるメタニルイエローを混合させることで無彩色点を通過する色変化を実現した.この結果,高感度化された同種金属二核錯体システムと無彩色点前後での劇的な色変化との協同によってppbレベルの鉄(III)イオンの目視閾値判定が可能となった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2014
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