分析化学
Print ISSN : 0525-1931
63 巻 , 6 号
特集 : “見える化” する分析化学
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
分析化学総説
  • 津山 尚宏
    原稿種別: 分析化学総説
    2014 年 63 巻 6 号 p. 445-453
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    目に見えない放射線による被ばくを定量的に評価することは,被ばく者への健康影響を予測し医療措置を正確にすすめ予後を評価する上で必須である.事故・災害による被ばくでは線量計などによる物理的線量計測を施行できないことも多く,事後に被ばく者の生体試料を用いて線量評価を行う「生物学的線量評価,biological dosimetry」が不可欠である.現在までに様々な線量評価法が開発されてきたが,正確性の観点からリンパ球の染色体異常頻度を測定する方法がgold standardとして頻用されている.本稿では,これに加え赤血球や歯,核酸,低分子代謝物などの様々な生体試料を用いた線量評価の試みを紹介し,有用性を議論する.
総合論文
  • 岡部 弘基
    原稿種別: 総合論文
    2014 年 63 巻 6 号 p. 455-465
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    温度はあらゆる化学反応を支配する物理量であり,細胞内温度は細胞内分子の動態や機能に強く影響している.またがん細胞などの病態細胞では亢進した熱発生があることが報告されている1).このことから,細胞内の温度計測により,細胞機能に関する理解が深まるとともに,新規診断,治療法の開発にも貢献すると期待されている.著者は,光を用いた高感度検出を可能とする光学顕微鏡を用いて細胞内温度を高感度かつ定量的に捉える方法を開発してきた.温度変化に鋭敏な応答を示す蛍光性ポリマー温度センサーを高感度イメージング法により検出することで,これまでにいずれも初となる単一生細胞の温度変化の追跡法や,生細胞内の温度分布を可視化する方法を開発した.これらを用いた細胞内温度計測は,従来明らかにされてこなかった細胞内温度に関する興味深い知見をもらしつつあり,生命科学にあまねく貢献できると期待される.
  • 兵藤 文紀, 伊藤 慎治, 内海 英雄
    原稿種別: 総合論文
    2014 年 63 巻 6 号 p. 467-476
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    酸化還元(レドックス)反応は様々な生体代謝反応を担い,ホメオスタシスの維持に重要な役割を果たしている.近年,生体レドックスバランス(生成系と防御系の均衡)の破綻が多くの疾患に関与することが明らかとなってきていることから,生体レドックス動態の可視化は病態の機序解明や薬効評価の指標としての役割を果たすことが期待されている.ニトロキシルラジカルは分子内に安定な不対電子(ラジカル)有し,電子スピン共鳴法(ESR)や核磁気共鳴画像化法(MRI)などの磁気共鳴法におけるレドックス応答造影剤として生体のレドックス動態を可視化するために活用されてきた.本稿では磁気共鳴画像化法を用いたレドックス動態の可視化についてこれまでの研究成果を紹介する.さらに現在開発を進めているレドックスモレキュラーイメージング(ReMI: redox molecular imaging)装置について最新の成果を紹介する.
  • 水野 初, 津山 尚宏, 升島 努
    原稿種別: 総合論文
    2014 年 63 巻 6 号 p. 477-484
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    細胞現象メカニズムの解明のためには,細胞内で起こるダイナミックな分子変化の詳細を見る必要がある.「単一細胞ダイレクト質量分析法」は,生きている細胞を観察しながらある瞬間の細胞内成分を見ることができる方法である.本論文では,この方法を小器官などの細胞内微小領域に適用し,マスト細胞モデルRBL-2H3細胞内に存在する分泌粒及び細胞質部位における代謝物局在を調べた.さらに安定同位元素標識体を用いた顆粒内ヒスチジン代謝動態追跡を行った.
  • 長谷川 健
    原稿種別: 総合論文
    2014 年 63 巻 6 号 p. 485-495
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    振動分光法の基本である赤外及びラマン分光法により,薄膜の分子配向を解析する考え方について述べる.分子凝縮系である薄膜のスペクトルを解析するには電磁気学が基本理論で,赤外分光法については表面選択律という極めて平易なルールにまとめることができ,簡単に官能基単位での分子配向を議論することが可能である.ラマン分光法による定量的分子配向の実際についても,赤外分光法と比較しながら概略を述べる.
  • 滝埜 昌彦
    原稿種別: 総合論文
    2014 年 63 巻 6 号 p. 497-513
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    飛行時間型質量分析計を用いた液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)手法と多変量解析に代表されるデータ処理手法を用いた最近の解析技術の進歩は,複雑化した測定結果の視覚化を可能にした.応用例として精密質量データベース及びmolecular feature extraction(MFE)などの新規解析手法を用いた食品中残留農薬分析のターゲットスクリーニング,ノンターゲットスクリーニング手法と,多変量解析手法を用いた食品中特異性成分の探索,品種識別及び2群間比較について述べる.
報文
  • 水口 仁志, 篠田 靖子, 我妻 孝佳, 高田 雅之, 上條 利夫, 志田 惇一
    原稿種別: 報文
    2014 年 63 巻 6 号 p. 515-523
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    メチルチモールブルー(MTB)を用いる同種金属二核錯体システムと微細化した陰イオン交換樹脂を用いる濃縮法を組み合わせたppbレベルの鉄(III)イオンの目視いき値判定法を開発した.MTBは,一つの試薬分子に2個の金属イオンが結合できる構造を持つ.MTBに対して鉄(III)イオンが小過剰の条件では,鉄(III)イオン濃度の狭い範囲でML型及びM2L型錯体のモル分率が急激に変化し溶液の色に反映される.ここで生じる色の境界は,MTBの濃度だけで容易に制御できる.本研究では,ppbレベルの低濃度設定領域に対応するため,微細化した陰イオン交換樹脂を用いる濃縮法と組み合わせて高感度化を図った.遊離のMTBと有色の錯体化学種は,吸収スペクトルの深色移動を伴いながら弱酸性の水溶液から陰イオン交換樹脂に定量的に吸着し,その後,酢酸セルロース製のメンブランフィルターを用いて回収することで高感度化が達成された.さらに,錯形成反応に対して不活性な色素であるメタニルイエローを混合させることで無彩色点を通過する色変化を実現した.この結果,高感度化された同種金属二核錯体システムと無彩色点前後での劇的な色変化との協同によってppbレベルの鉄(III)イオンの目視閾値判定が可能となった.
ノート
  • 高橋 由紀子
    原稿種別: ノート
    2014 年 63 巻 6 号 p. 525-531
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    In recent years, we have produced next-generation highly sensitive test papers named ‘dye nanoparticle-coated test strips (DNTSs)’ for harmful ions at ppb level in aqueous samples. The preparative method based on re-precipitation method is simple and feasible, but applicable indicator dyes are limited to be hydrophobic one. In order to fabricate DNTSs with hydrophilic charged indicators, we here report a novel method to prepare DNTSs loaded nano-composites of anionic dyes and ion exchange nano-adsorbents. We tested four popular anionic reagents (tetra-sulfonated TPPS; tri-sulfonated HNB; di-sulfonated Bathophen-S; mono-sulfonated Lumogallion) and two ion exchange nano-adsorbents [weakly basic alumina fiber, AS3 (10 nm×100 nm) and strongly basic trimethyl-modified latex, latex-N(CH3)3+ (100 nm in diameter)]. The preparative method of nano-composite coated DNTSs is also simple; initially an anionic indicator and a nano-adsorbent are mixed in pH-controlled water, and then the dispersion is filtered with a membrane filter having a 0.1 μm pore size under suction. The retained reagent percentage on the membrane strongly depends on ion exchange nano-adsorbent, the charge of an anionic dye, and the reagent concentration, because the nano-composite formation is based on electrostatic interaction. Especially, by using latex-N(CH3)3+, almost 100% coating of anionic dyes was successful in the pH range of 2 – 10. Particle size analysis and zeta potential measurements indicated that nano-composite layers are made in two ways: one is surface filtration of the reagent-adsorbed ion-exchanger; the other is filtration of aggregates of reagent-adsorbed ion-exchangers. The thickness of the nano-composites layer depended on the surface concentration of nano-adsorbent as well as the zeta potential of the nano-composite. The thicknesses of nano-composite layers were 4.55 μm for TPPS/latex-N(CH3)3+ and 3.34 μm for TPPS/AS3 when the surface concentrations of nano-adsorbents were adjusted to be 0.26 mg cm−2 and 0.32 mg cm−2, respectively. Highly negatively charged dyes, like TPPS and HNB, are applicable to the detection of metal ion by filtration enrichment of a sample solution containing high concentration of NaCl; however, mono-anionic or di-anionic dyes, such as Lumogallion and Bathophen-S, are inapplicable due to the leakage of dye or signaling complexes with target ions.
  • 佐藤 幸司, 吉田 和之, 森永 浩子, 山口 亮, 小河 潔
    原稿種別: ノート
    2014 年 63 巻 6 号 p. 533-538
    発行日: 2014/06/05
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    We performed a study of MALDI-MS imaging that is a combination of an optical microscopy and MALDI mass spectroscopy. Mapping images of chemical materials were successfully obtained by applying 2,5-dihydroxybenzoicacid (DHB) as a matrix with a sublimation method. In this paper, we present two results: (1) the distribution of light stabilizers in a multi-layer synthetic film, and (2) the state of the penetration phenomena of hair conditioner chemical components in the hair shaft. In either case, a careful selection of m/z ion enabled successful mapping for individual components; and a variation of the distribution according to the type of components was revealed. Further, important implications with regard to the development design of the materials structure and chemical components were deduced. These results indicated that the MALDI-MS imaging method, which has been extensively used only for biomaterials, is also a powerful tool for the analysis of chemical materials.
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