分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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イオン液体を脱離溶媒とするヘッドスペースGC/MSによる空気中揮発性有機化合物の分析
富澤 卓弥内山 茂久稲葉 洋平欅田 尚樹太田 敏博
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2014 年 63 巻 9 号 p. 727-734

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抄録

ヘッドスペースサンプラーを用いた空気中揮発性有機化合物の高感度分析法を開発した.本研究では幅広い温度範囲で液体状態として存在するイオン液体に注目し,脱離溶媒としての適用を検討した.活性炭を充填したパッシブサンプラーを用いて空気中の揮発性有機化合物(VOC)を捕集し,その後,2-ヒドロキシピリジン(HP)とイオン液体との混合溶媒と活性炭を共にバイアルに入れ混合し密封する.これを所定の条件下で加熱を行うことによって,活性炭中のVOCを脱離させ,生じた気相部をガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS)に導入することで分析を行う.様々な分析条件を検討した結果,脱離溶媒はHPとテトラブチルホスホニウムブロミド(TBPB)の混合物,ヘッドスペースサンプラーの加熱温度は175℃,加熱時間は40分,HP/TBPB混合物の添加量は300 mgが適当であることが分かった.二硫化炭素を用いた従来の溶媒脱離法との比較では,20~40倍の感度の向上が認められた.検出感度が向上したため,選択イオン検出(SIM)モードに比べて感度は劣るものの,定性に優れた走査検出(SCAN)モードでGC/MS分析を行うことが可能となった.また,蒸気圧が極めて低いイオン液体を脱離溶媒として用いることで,脱離溶媒がGC/MSに導入されず,溶媒ピークの干渉を受けずに分析することができることが明らかになった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2014
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