分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
LC-MS/MSによる水環境試料中のテトラサイクリン系抗生物質及びその代謝物の定量
内藤 宏孝
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 64 巻 1 号 p. 25-34

詳細
抄録

水環境試料中に残留する微量のテトラサイクリン系抗生物質[クロルテトラサイクリン(CTC),テトラサイクリン(TC),オキシテトラサイクリン(OTC),ドキシサイクリン(DC)]及びCTCの代謝物であるイソクロルテトラサイクリン(iso-CTC)を,液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC-MS/MS)で定量する方法を開発した.試料にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA-2Na)を添加し,固相カートリッジに通水した後,メタノール/0.1% ギ酸水溶液(1 : 1, v/v)で溶出し,LC-MS/MS法で定量した.本法の検出下限は,CTC 6.2 ng L-1,TC 3.0 ng L-1,OTC 2.9 ng L-1,DC 4.2 ng L-1iso-CTC 2.8 ng L-1で,添加回収実験による回収率は,CTC 89~99%[変動係数(c.v.)3.6~9.0%],TC 95~100%(c.v. 2.5~7.8%),OTC 96~106%(c.v. 1.9~7.0%),DC 80~87%(c.v. 2.3~6.8%),iso-CTC 94~105%(c.v. 2.8~7.5%)であった.本法は,試料へのEDTA-2Naの添加,固相からの溶出溶媒としてメタノール/0.1% ギ酸水溶液(1 : 1, v/v)を用いることにより,TCsの効率的でしかも再現性のある回収が実現され,10 ng L-1レベルのTCsの定量が可能であった.さらに,本研究で開発した分析法を用い,環境水にCTCを添加してその経時変化を確認したところ,一部のCTCがiso-CTCに変換されることが判明し,さらに,実際の環境水中においても,iso-CTCが残存していることが確認された.iso-CTCはCTCと比べ環境水中のきょう雑物の影響を受けず安定であり,環境水中に残留する可能性が示唆された.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2015
前の記事 次の記事
feedback
Top