分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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放射光蛍光X線分析を用いた白色自動車ベースコート塗膜片の異同識別
石井 健太郎竹川 知宏大前 義仁西脇 芳典蒲生 啓司
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2015 年 64 巻 12 号 p. 867-874

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抄録

本研究により,放射光蛍光X線分析(SR-XRF)が白色自動車ベースコート塗膜片の異同識別のための極めて有効な科学捜査手法であることが明らかになった.18種類の白色ソリッド自動車塗膜を収集し,ベースコート層の微細片を分析に用いた.材質分析のために顕微フーリエ変換赤外分光(FT-IR)分析を,微量元素分析のためにSR-XRFを行った.顕微FT-IR分析により,材質の違いに基づいて5グループに分類できた.SR-XRFにより,微細片からTi, Cr, Fe, Cu, Zn, Pb, Br, Sr, Zr, Nbを非破壊で検出することができた.試料は,Nbの有無により2グループに分類された.検出された微量元素は,異同識別の有用な指標となった.元素種で識別できない試料について,TiのX線強度をNbのX線強度で除した規格化X線強度による比較を行った.Ti/Nbの規格化X線強度は,5.0% 以下の再現性で分析でき,白色自動車ベースコート塗膜片の異同識別の有用な指標になることが分かった.顕微FT-IR分析とSR-XRFを組み合わせて用いることで,18試料の組み合わせ153通り(18C2)中152通りを識別することができた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2015
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