2019 年 68 巻 10 号 p. 751-755
金ナノ粒子(AuNPs)は,色彩変化に優れているなど非常に優れた特性を有するために,分析化学においても重要な素材として広く使用されている.特に粒径が10 nm程度の比較的小さなAuNPsはセンサー素子として有用である.その一方で,一般的に合成する粒径の制御と粒径の維持が難しい.本論文では,水素化ホウ素ナトリウム水溶液とテトラクロロ金(III) 酸水溶液を一度に混合することで粒径数nmから10 nm以下のAuNPsの簡便・迅速な合成法と合成後における配位子置換の検討を行った.上記手法を用いることで,粒径3.9±1.4 nm,粒子数濃度1.2 × 1016 particles/mLのAuNPsを15分の合成時間で得ることができた.合成後,このAuNPs溶液は少なくとも3週間,単分散状態を維持していた.このAuNPsは,クエン酸,非イオン性界面活性剤Triton X-114,1,3-プロパンジチオールをそれぞれ混合するだけで配位子置換が可能であった.本法は,従来法と比べて溶液混合のみと操作が単純で数時間を要していた反応時間は15分に短縮された.