分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
反応熱分解GC及びMALDI-MSによるアミノフェノール単位を含む全芳香族液晶ポリエステルの分子構造解析及び重合反応過程の解明
大谷 肇杉本 沙哉佳平野 美智子加藤 浩一塩飽 俊雄横田 俊明
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 71 巻 10.11 号 p. 571-578

詳細
抄録

4-ヒドロキシ安息香酸,イソフタル酸及び4-アミノフェノール単位からなる,三元共重合型全芳香族液晶ポリエステル(LCP)試料について,それらの分子構造解析結果をもとに,当該LCPの重合反応過程の解明を試みた.反応温度を徐々に上昇させながら縮合反応させる重合の各段階で逐次サンプリングして,重合度の異なる7種類のLCP試料を調製した.これらをまず有機アルカリ共存下での反応熱分解ガスクロマトグラフィー測定した結果,反応系の温度が比較的低い(約250℃)重合初期では,アミド結合が優先的に形成されるが,重合温度の上昇に伴ってエステル結合の生成も進み,反応温度300℃ 以上の重合中期以降は両者の生成率はほぼ等しくなることがわかった.次に,これらのLCP試料をマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析測定して得られたマススペクトル上には,重合初期段階に主に観測されたカルボキシル及びアセチル基末端を有する生成物のピークが重合の進行に伴い減少し,代わってフェノキシ及び水酸基末端を有する生成物の増加が確認された.これらの結果から,重合温度の上昇に伴って末端基における脱炭酸反応,並びに脱ケテン反応が進行することが示唆された.

著者関連情報
© 2022 The Japan Society for Analytical Chemistry
前の記事 次の記事
feedback
Top