2022 年 71 巻 12 号 p. 645-652
国産,カナダ産及びトルコ産のデュラム・セモリナを使用したパスタについて,軽元素安定同位体比解析による産地判別の可能性を検証した.検証の結果,国産パスタの炭素・窒素同位体比は,カナダ産及びトルコ産に比べて有意に低いことが明らかとなった.カナダ産パスタの酸素同位体比はトルコ産及び国産に比べて有意に低く,炭素,窒素,及び酸素の安定同位体比解析によるパスタの原料原産地判別の可能性が示唆された.また,パスタから抽出したグルテニン画分をドデシル硫酸ナトリウム─ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供することで,簡便な産地判別が可能であるかを検証した.検証の結果,パスタの製造工程がグルテニン画分に含まれるタンパク質群の組成に与える影響は小さいことがわかった.また,国産,トルコ産及びカナダ産のデュラム・セモリナ,並びにパスタのグルテニン画分を比較した結果,それぞれ国産(40 kD付近)あるいはトルコ産(110 kD付近)に特徴的なバンドが見られた.以上の結果から,SDS-PAGEによるデュラム・セモリナ及びパスタの簡便な原料原産地判別の可能性が示唆された.