分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
生物試料中のアミノ酸の窒素安定同位体比及び放射性炭素濃度測定
石川 尚人
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2022 年 71 巻 12 号 p. 653-662

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抄録

本稿では,まず陸域と水域の一次生産者から有機物を得る混合生態系の解析のために,メチオニンの窒素安定同位体比(δ15NMet)の指標としての有効性を検討した.陸域生態系におけるメチオニンとフェニルアラニンの同位体比の差(ΔMet-Phe=−16.5±0.5‰)と水域生態系における差(ΔMet-Phe=−5.0±0.5‰)は明確に区別されることがわかった.次に,ガスクロマトグラフィー/燃焼/同位体比質量測定法(GC/C/IRMS),液体クロマトグラフィー(LC) × 元素分析計/IRMS(LC × EA/IRMS),LC × GC/C/IRMSの3手法を比較した.魚類筋肉のグルタミン酸(δ15NGlu)とフェニルアラニン(δ15NPhe)値はすべての測定法のペアでほぼ一致していた.さらに,アミノ酸の放射性炭素濃度(Δ14C)測定のための単離・精製方法を改良し,EA/加速器質量分析装置(EA/AMS)を用いて測定を行った結果,標準物質ではΔ14C測定値と既知のΔ14C値がよく一致した.

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© 2022 The Japan Society for Analytical Chemistry
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