分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
化学分析の質及び操作性の向上を志向したフロー分析法の展開
本水 昌二Lukman HAKIM樋口 慶郎鈴木 保任
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2024 年 73 巻 9 号 p. 467-503

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抄録

マニュアルバッチ(バッチ式用手)法で行われていた化学分析をフロー分析法(FIA,SIAをはじめとするコンピュータ制御フロー測定,フロー前処理装置などを用いた測定法)により自動化することで,化学分析の更なる高度化(分析の質的向上並びに分析の操作性向上)を志向して研究を行った.FIAでは,主に吸光検出法,蛍光検出法に基づく測定感度・精度の向上を目指してホウ素,リン,アルコール,イオン性界面活性剤などの新しい検出反応の開発,測定法の開発を行った.また各種前処理装置を組み込んだオンライン─FIA法(溶媒抽出法,ガス拡散分離法,クロマトメンブレン法,白金触媒法など)を開発した.複雑・煩雑及び労力・時間消費的な前処理を自動化するために新たにコンピュータ制御フロー化学分析装置(CC-FCA)としてシリンジポンプ,バルブ,ソレノイド型ポンプ,ソレノイド型バルブを制御できるプログラムを独自に開発し,さらに自動化目的に最適なプログラムへの新展開,新たな機能付与・向上を進めた(LMPro Version 1〜6シリーズ; 最新版LMPro V. 6 : マルチタスクFCAなど).新開発のプログラムを用いたポンプ,バルブ制御による固相抽出自動化装置を構築し,ICP-AES,ICP-MS,ET-AAS,LEPなど検出装置のオンライン前処理装置として複合化・システム化を達成した.SIAの優れたPC制御前処理機能に着目し,ボルタンメトリーなどの検出法とのオンライン化による新規高感度測定法も開発した.本研究で開発した制御プログラムによるポンプ,バルブの統合的制御により,シリンジ送液(SP-)FIA,ソレノイドポンプ,バルブ─FIA,SIEMA(同時注入迅速混合分析法)などのフロー化学分析も可能にした.吸光度測定検出器として,軽量・コンパクトな多チャンネル検出器(3-,4-及び5-チャンネルLED光源検出器)を開発し,オンサイト・多成分測定を可能にした.多チャンネル検出器で測定したフローシグナル解析のために,1〜5波長の測定結果を同時に読み込み解析できる多チャンネルフローシグナル解析プログラムSpectroX Analyser(Version 9)を新規に完成させ,解析操作性・迅速性・簡便性の向上と分析の質向上に活用した.

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© 2024 The Japan Society for Analytical Chemistry
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