抄録
我々は Vorner 型先天性掌蹠角化症の父娘例を最近経験した.両側とも,生後まもなくより掌蹠に限局した禰漫性の角化局面を生じた.父例で生検を施行し検索したところ,光顕的には顆粒変性および epidermolytic な変化を,電顕的にはトノフィラメントの巨大凝集塊をみとめた.父親例に対してレチノイドを投与したところ,臨床症状の著明な改善をみとめた.投与前後に足蹠角層を採取し,ケラチン線維分画,水溶性分画並びに膜および膜間物質分画に分けて正常人足蹠角層との対比の下に生化学的に比較分析した.ケラチン線維および水溶性分画では SDS ボリアクリルアミドゲル電気泳動において異常パターンを示したが,この異常はレチノイド投与によっても是正されなかった.しかしながら膜および膜間物質分画ではアミノ酸分析によって,使用前低値を示した1/2シスチンがレチノイド投与後に増加の傾向を示した.