抄録
酸性の濃厚な無機塩の水溶液中において,水溶性の有機酸が弱酸性の陽イオン交換樹脂に分子吸着される現象を見いだし,これを利用する塩析クロマトグラフィーについて研究を行ない,不飽和ジカルボン酸の立体異性体であるマレイン酸およびフマル酸を相互に分離する方法について検討した.
塩析剤の種類,濃度およびpHの吸着性に及ぼす影響を検討した結果,pH1.5の4M塩化カルシウム溶液を展開液に用い,200~400メッシュのAmberlite CG-50をつめたφ17mm×500mmのカラムを用いて,40℃で展開を行なえば,両異性体が完全に分離できることが明らかになった.
クロマトグラフ流出液中のフマル酸およびマレイン酸は,220mμにおける吸光度を測定して,吸光光度的に定量し良好な結果が得られた.
また,塩析剤にn-ブタノールを添加した場合の吸着性についても検討を加えた.