1968 年 17 巻 11 号 p. 1353-1358
グリオキシムを合成し,種々の金属イオンとの反応を調べた結果,アルカリ性溶液中で各種の錯体を生成する.これらの錯体,すなわち,鉄(III), 銅(II), ニッケル(II)およびコバルト(III)の各錯体はすべて紫外部に吸収極大波長を持つことがわかった.これらの錯体のなかで,最も安定性のよい錯体は,コバルト錯体であることがわかった.また最大吸収波長は286.2mμ, 分子吸光係数は約15,000である.次にグリオキシムによるコバルトの定量の際,共存イオンによる影響を調べた結果,発色後にEDTAを添加することによって,マスキングできることがわかった.以上の結果から,グリオキシム試薬によるコバルトの定量法は,操作は簡単であるので,迅速定量に利用できるものと思われる.