抄録
アデニンヌクレオチド類の金属錯体の生成能はATP>ADP>AMPの順にあるといわれ,AMPの金属錯体生成能は比較的小さいとされており,また従来の研究は溶液系におけるものであるが,著者らは,pH4.0で5'-AMPと銅(II)イオンの等モル混合水溶液を40℃に加温することにより,結晶性粉末として銅(II)-5'-AMP錯体を単離した.この錯体は,5'-AMPと銅,1:1の錯体で配位水1分子を含み[(C10H12N5O7P)Cu(H2O)]の組成であった.銅の配位部位は,赤外線吸収スペクトルなどの測定により,アデニン核のN1位およびリン酸基の両方が関与していると推定される結果を得た.この錯体調製と同様の条件(pH4.0~4.5)では,銅(II)は,ADP,ATPとは,難溶性錯体の生成は認めなかった.
このことは,この銅(II)-5'-AMP錯体を利用して,5'-AMPの分離分析が可能であると考えられる.