分析化学
Print ISSN : 0525-1931
石英トーションバランスの動特性と感度による微小質量標準の再現
内川 恵三郎穂積 啓一郎
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1972 年 21 巻 2 号 p. 232-239

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抄録

高精密な微小質量測定は校正された微小分銅と精密なはかりを用いて行なわれる.微小分銅は汚染,腐食,摩耗,損傷などに影響され,1μg以下の精度を長期にわたり,同一精度で維持することは困離である.そこで,恒久的な微小質量の保存方法として,再現性のよい物性に標準を移し替えることを検討し,微量および超微量化学分析で使用され,じゅうぶんな再現性および安定性を有する石英製のトーションバランスの感度をパラメーターとして微小質量を再現する方法について考察した.その感度の直線性ならびに温度と荷重の影響について定量的に解析し,石英トーションバランスの感度が温度tと荷重Mの関数として次のように表わされ,トーション繊維の弾性限界内(7mg以下)では0.01%の精度で微小質量を実現できることが明らかになった.
S=2.32504{1-α(t-20)(1-βM)}div/μg
ここにαは温度係数で1.31×10-4deg-1であり,βは荷重係数で5.45×10-6mg-1である.
このように石英トーションバランスの感度が厳密に校正されれば,ほとんど半永久的に分銅に代わる高精度の標準器となり,逆に他の微小分銅の器差の決定にも利用できる見通しが得られた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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