分析化学
Print ISSN : 0525-1931
3溶媒抽出
関根 達也銭屋 義行本田 博史増井 直人長谷川 佑子
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1974 年 23 巻 13 号 p. 11R-27R

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抄録

溶媒抽出に関する研究報文は, あいかわらず膨大な数が出版されているが, 最近その内容に多少変化が現われてきた.それは, 溶媒抽出法が前にも増して分離, 比色分析, 原子吸光分析, 放射化学の実験に広く用いられるようになったにもかかわらず, その基礎的な問題を研究した報文の数に頭打ち, ないしは減少の傾向が見えてきたことである.したがって, この進歩総説の執筆にあたって行なった文献の検索でも, 報文の標題に溶媒抽出を示す文字が見られないにもかからわず, 比色分析や原子吸光分析の操作の重要な部分に溶媒抽出が用いられているものや, 溶媒抽出の結果に関する考察を分析の立場から行なったものが多いのが目だった.
本進歩総説は例外を除き1972年と1973年の文献を採用した.なお, 文中で特に出現回数の多い試薬に対して次のように略名を用いた.TBP (リン酸トリブチル), TOPO (トリオクチルホスフィンオキシド), MIBK (メチルイソブチルケトン), TOA (トリオクチルアミン), DEHP {ジ (2-エチルヘキシル) リン酸}, TTA (テノイルトリフルオロアセトン), PAN {1- (2-ピリジルアゾ) -2-ナフトール}, Dz (ジフェニルジチオカルバゾン…ジチゾン), DDC (ジエチルジチオカルバミン酸).
以上あげたように, この期間の溶媒抽出に関する研究.は各方面にわたっており, いわゆる三元錯体の抽出とその比色定量への応用が熱心に試みられており, いくつかの新しい系や実験技術の提案がなされているが, 全体として非常に目だつ新しい研究はない.しかしいろいろな系のより詳細な研究により, この方法の応用が広く深くなってきたことは, この期閤の進歩といってよいであろう.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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