分析化学
Print ISSN : 0525-1931
紫外吸収検出器を用いた高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる石油及び石油製品の識別
東 国茂萩原 一芳
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1978 年 27 巻 2 号 p. 115-120

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抄録

紫外吸収検出器を用いた高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により,石油及び石油製品の識別について検討を行った.ポリスチレンゲルHSG-15を充てんしたカラムを用いテトラヒドロフラン(THF)を溶離液として測定し,検出波長を変えてクロマトグラムのプロフィールに与える影響について検討した.(240~400)nmの範囲で測定した結果,特に原油,重油について,クロマトグラムのプロフィールは検出波長により変化し,多くの波長でクロマトグラムを測定することが識別の確実性を高めることが明らかとなった.この結果をもとに,これらの油識別のための実用的な分析手順について考察を行った.
以上の結果から紫外吸収検出器を用いたGPCにより,石油及び石油製品の実用的な識別を行う場合,次のような分析手順が考えられる.
まず,はん用型検出器(波長254nm固定)を用い,クロマトグラムを測定する.そのクロマトグラムより,ピーク幅が狭く比較的単純なプロフィールを示す(1)燈油,軽油,潤滑油,A重油のグループと,それ以外の(2)B重油,C重油,原油のグループに分類することができる.(1)のグループ内は一般に保持時間で識別することが困難であるので,ポアサイズの異なるカラムでの分離を試みる.あるいはガスクロマトグラフィーが有効な手段になると考えられる.(2)のグループ内では,原油について上記8種類に限定した場合,特にマーバン,カフジ,ミナス原油,C重油が明確に識別できる.他の原油もクロマトグラムの低分子量側でわずかなプロフィールの相違を示すが,254nmで類似のプロフィールを持つ原油の識別性を改善するため,プロフィールの相互の差が比較的大きくなる280nmでのクロマトグラムを測定する.
油が相互に混入している場合,そのクロマトグラムは混入成分の種類と量によりプロフィールが異なり,識別は一層,複雑になると判断される。しかし,二つの油の同一性の判定の場合は,できるだけ多くの検出波長でクロマトグラムを比較するのが有効な方法であると考えられる.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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