分析化学
Print ISSN : 0525-1931
界面活性剤二分子膜ベシクル触媒効果及びウラニン増感化学発光を利用する超微量シアン化物イオンのフローインジェクション分析
石井 幹太山田 正昭鈴木 繁喬
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1986 年 35 巻 12 号 p. 955-960

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抄録

新しい化学発光(CL)系,すなわち陽イオン界面活性剤臭化ジドデシルジメチルアンモニウム(DDAB)二分子膜ベシクル-ウラニン-溶存酸素-水酸化ナトリウム-シアン化物イオン(CN-)CL系をFIAと組み合わせたFI/CLシステムを用い,DDABベシクルの触媒効果及びウラニンの増感作用を利用する超微量CN-のCL分析を検討した.本CLにはバックグラウンドCL(DDAB/ウラニン/水酸化ナトリウム)が存在するので,本FI/CLシステムは3流路から構成した.又,本CL反応が極めて速いことからシステムの各流路は検出器内のポリ塩化ビニル製渦巻き型フローセル内で合流させてある.検出下限及び定量下限は,20μl注入法でそれぞれ1.9×10-9M及び5.0×10-8Mで,又試料を連続的に導入する方法(導入速度3.4ml/min)ではそれぞれ3.2×10-10M及び5.5×10-9Mである.応答の直線性は定量下限より約100倍高濃度領域まで認められた.選択性は高く,CN-に次いで大きなCL応答を与える硫化物イオンでもその相対モル応答はCN-の約0.1%である.ベシクルはミセルよりも大きなCL増感作用や高選択的反応を促進する反応場を提供することが分かった.繰り返し精度は相対標準偏差で2.1%(n=10, 1.0×10-7M CN-溶液を20μl注入の場合)で,試料の分析数は1時間当たり360試料である.又,本CL機構についても説明を加えた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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