1986 年 35 巻 12 号 p. T124-T129
水中の全リンの定量のためのペルオキソ二硫酸カリウムによる試料の分解に際する加熱の効果を,アデノシン二リン酸,レシチン及びトリポリリン酸塩を試料に用いて検討考察し,効果的な加熱方法を推定した.試料の分解は100~120℃で急速に進む.硫酸が存在すると,アデノシン二リン酸の分解は容易となるが,ペルオキソ二硫酸カリウムの自己分解が著しくなるためレシチンの分解は困難になる.又トリポリリン酸塩の加水分解は,ペルオキソ二硫酸カリウムの自己分解で生じる酸の存在で十分に進む.効果的な試料の分解としては,ペルオキソ二硫酸カリウムだけの添加で,なるべく速やかに120℃の高温に加熱する方法が優れていると考えられる.