分析化学
Print ISSN : 0525-1931
海水中の一置換体及び二置換体有機スズ化合物の固相抽出
井出 邦和郡 宗幸佐藤 幸一井上 義則大河内 春乃
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1999 年 48 巻 2 号 p. 245-252

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抄録

有機スズ化合物の二置換体であるジブチルスズ(DBT),ジフェニルスズ(DPT)及び一置換体であるモノブチルスズ(MBT),モノフェニルスズ(MPT)の固相抽出法を検討した.有機スズ化合物の回収率の測定には原子吸光法を使用し,超微量有機スズ化合物の測定に,水素化物/気化導入/ICP質量分析法を用いた.固相抽出剤に,親水性のイオン交換型強酸性スルホプロピル基を持つ充填剤(Excelpak SPE ION-C224,ION-CM3,横河アナリティカルシステムズ製),並びに強酸性陽イオン交換樹脂(CK08P,三菱化学製)を用いて,その抽出特性を比較検討した.その結果,交換容量も多く,良好な結果を与えたCK08Pを採用した.海水の代わりに,有機スズ化合物2000μgを含む2.5%塩化ナトリウム試料溶液を通液し,樹脂量,コンディショニング,通液速度,ナトリウムイオン量及びpH等の影響,樹脂中のナトリウムイオン洗浄除去,及び溶離液等の検討を行った.その結果,樹脂量12ml,通液速度5~6ml min-1が良好な結果を与えた.有機スズ化合物の吸着を阻害する樹脂に吸着されたナトリウムイオンの除去には試料溶液125ml通液ごとに0.5M塩酸溶液100mlでの洗浄が有効であった.溶離液(0.5M塩酸-メタノール)14mlで溶離した.DBTは500mlの試料溶液を125ml通液ごとに洗浄してナトリウムイオンを除去し,100%近い回収率を得た.一方,MBTは試料溶液500mlでは62%と低い値を示したが,250mlでは100%近い回収率を得た.超微量濃度のMBT,MPT,DBT及びDPTについて本操作を適用し,水素化物発生/気化導入/ICP-MS法で測定した結果,約100%の回収率を得ることができた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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