分析化学
Print ISSN : 0525-1931
48 巻, 2 号
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  • 澤本 博道
    1999 年 48 巻 2 号 p. 137-150
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    種々の金属イオンの吸着ストリッピングボルタンメトリーについて,そのために使用した配位子,分析方法の感度,実試料への応用に力点を置きながら解説した.まず,ポーラログラフィーの歴史について述べ,電荷授受反応を前濃縮に用いるストリッピングボルタンメトリー法について解説した.吸着ストリッピングボルタンメトリーについては,リボフラビンを例として,カソーディック吸着ストリッピングボルタンメトリー,アノーディック吸着ストリッピングボルタンメトリーについて述べた.金属イオンの吸着ストリッピングボルタンメトリーの前濃縮においては,金属イオンとの錯体の吸着が利用される.2,2'-ビピリジン(配位子)を用いるニッケルの吸着ストリッピングボルタンメトリーについて説明した.周期表に従って金属を分類し,それらの金属に関する吸着ストリッピングボルタンメトリー法について各論的に述べた.又,良く用いられるリガンドはTable 2に示した.分析感度がpMに達する超高感度の触媒吸着ストリッピングボルタンメトリーについても紹介した.
  • 本水 昌二
    1999 年 48 巻 2 号 p. 151-181
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    イオン会合と反応機構について分析化学の観点から主要な研究を概観し,総説としてまとめた.イオン会合はイオン性物質の分離・分析に幅広く用いられてきた.従来,イオン会合は主に溶媒抽出,沈殿生成,疎水性吸着剤への吸着,滴定,逆相HPLC,フローインジェクション分析,キャピラリー電気泳動などの方法に利用されている.まず,分析化学におけるイオン会合,電解質溶液そしてイオンの周りの水構造について歴史的背景をまとめた.次にイオン会合理論の概略をまとめ,更にイオン会合平衡の解析方法についてまとめた。最後に,水溶液及び液液分配平衡におけるイオン会合機構を考察した.本総説のまとめとして,イオンを三つのグループに分けることが提案された.それらは,水構造形成イオン(WSF),水構造破壊イオン(WSB)及び疎水的水構造促進イオン(HSP)であり,それらのイオン会合性を考察した.分析化学的に重要なイオン会合体は静電的相互作用に基づくイオン会合体と疎水的水構造によるイオン会合体である.
  • 受田 浩之
    1999 年 48 巻 2 号 p. 183-191
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    固定化酵素,固定化微生物を利用した,食品成分の簡易・迅速分析システムの開発を行った.はじめに固定化酵素とフローインジェクション分析(FIA)システムとの組み合わせで,食品の生体調節機能因子の一つであるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),活性の計測システムを試作した.本システムはスーパーオキシド陰イオンの発生に固定化キサンチン酸化酵素を利用した経済的な分析法であり,1検体の分析時間は2分以内であった.次に,酵素を固定化したマイクロプレートを利用する新しい分析システムの開発を試みた.アビジン-ビオチン架橋法によりプレート上に固定化したグルコース酸化酵素は高い活性を示し,食品中のグルコース分析にも適用可能であった.操作安定性,並びに貯蔵安定性も優れており,50回の繰り返し測定と半年間の室温保存でも活性の低下は認められなかった.微生物が有するユニークな群特異性は新規分析項目の開拓に役立つ.その例として,固定化Arthrobacter nicotiana-FIAシステムによる低級脂肪酸の簡易・迅速分析システムの開発を行った.本システムで得られる応答は,牛乳の酸敗臭の原因とされる炭素数4から12の低級脂肪酸の濃度の合計値と高い相関を示し,1検体の分析時間は約3分であった.本システムの応答は生乳中の体細胞数と一定の相関を示し,乳房炎乳の検出にも適用可能であることが示唆された.更に固定化Pseudomonas putidaをワイン中の有機酸の分析に利用したシステムについても述べる.
  • 喜羽 百合子, 馬場 嘉信
    1999 年 48 巻 2 号 p. 193-203
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ヒト・ゲノム解析が進むにつれて,ヒト・ゲノム上の3塩基の繰り返し配列の伸長が発症と深く関連した疾患が発見され,これらは,トリプレットリピート病と呼ばれるようになった.最近,トリプレットリピート病のDNA診断法が開発されたが,これらの方法では,DNAの解析にゲル電気泳動が用いられ,自動化・高速化の点で非常に遅れている.そこで,本研究では,高速・高性能なDNA解析法であるキャピラリー電気泳動によるトリプレットリピート病のDNA診断システムの開発を目標として,特異な高次構造を形成すると予想されるGCリッチなトリプレットリピートDNAフラグメントの泳動挙動を高分子物理学的理論に基づいて詳細に検討した.一本鎖DNAマーカーの泳動挙動を基に,トリプレットリピート病のDNA診断法として開発されたrepeat expansion detection (RED)反応により生成するDNAのモデル化合物として,一本鎖トリプレットリピートDNAフラグメントを合成し,その泳動挙動を解析した.その結果,すべてのトリプレットリピートDNAフラグメントの移動度はマーカーと比較してかなり大きくなった.これはトリプレットリピートDNAフラグメントの泳動挙動の非常に重要な特徴であり,その高次構造が大きく影響しているものと思われる.トリプレットリピートDNAフラグメントとDNA分子量マーカーの移動度について,reptation理論に基づき解析し,DNAの柔軟性の指標となる持続長を計算した.その結果,トリプレットリピートDNAフラグメントで柔軟性が低下していることが明らかとなった.このことは,トリプレットリピートDNAが特異的なヘアピン構造を形成することを示している.
  • 山下 浩
    1999 年 48 巻 2 号 p. 205-214
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    テトラメトキシシラン,メチルトリメトキシシラン,塩化ジルコニル,ジルコニウムテトラプロポキシド及びチタンテトライソプロポキシドを出発原料とし,W/O型エマルション中の水相に相当するミクロな反応場において,これら原料の加水分解・重合反応を制御すること並びに,その後の熱処理及び引き続いての酸処理条件を検討した結果,粒子径並びに細孔径をコントロールした球状多孔質セラミックス粒子が合成できた.シリカ系粒子では,細孔径を4から600nmの範囲でコントロールすることができた.ジルコニア系粒子では,細孔径は4nmであったが,シリカとの二元系にすることにより,比表面積はジルコニア単独に比べて2倍強の260m2g-1に増大した.又,シリカ単独では溶解してしまう1M水酸化ナトリウム水溶液に浸けてもあまり溶解せず(10 mass% の重量減少),耐薬品性に優れていた.チタニア系粒子の細孔径も4nmであったが,シリカとの複合粒子にし,その後アルカリでシリカ成分を溶出することにより比表面積はチタニア単独に比べて5倍の180m2g-1に増大した.
  • 奥村 稔, 藤永 薫, 清家 泰
    1999 年 48 巻 2 号 p. 215-224
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    活性炭にジルコニウムを担持させてリン酸イオンのための吸着媒体(ジルコニウム担持活性炭,Zr-C*)を作製した.Zr-C*へのリン酸イオンの吸着はジルコニウムとリン酸イオンとの親和性に基づくもので,その吸脱着は溶液のpHにのみ依存する.このZr-C*を用いて,淡水から汽水,海水までの環境水に適用できる迅速,簡便なリン酸イオンの捕集濃縮法を開発した.吸引濾過フロー法では,試料水(pH1.5)をZr-C*を通して吸引濾過することにより水中リン酸イオンを吸着捕集し,又1M水酸化ナトリウム溶液で溶離することができる.大容量の試料水を短時間に処理することができ,高濃縮が可能である.一方,カラム固相抽出法では,試料水を小形Zr-C*カラムに通すものである.特別な装置など用いないことから,フィールドにおける簡便な現場捕集法として活用できる.いずれの方法も,環境水に適用したところ良好な結果が得られ,本法の有用性が示唆された.
  • 加藤 康伸, 熊谷 哲, 山口 茂六, 西岡 洋
    1999 年 48 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    迅速な定量法としてJISで定められている水銀ランプを用いたCOD測定では水中成分の組成変動により測定値が大きく変わる欠点がある.本報告では,紫外部に吸収を持つ数種の有機化合物の紫外吸収スペクトルと可視吸収スペクトルを用いて検量モデルを作成し,PLS法を用いてCODの予測を行い,良い予測精度を得た.
  • 渡辺 邦洋, 中臺 文夫, 崎山 真奈美, 山口 和映, 板垣 昌幸
    1999 年 48 巻 2 号 p. 231-238
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    過酸化水素共存下で微量コバルトが存在するとヒドロキシルラジカルが生成し,二座配位子のみでなく三座配位子のアゾ化合物でも分解退色することを見いだした.代表的三座配位子であるヒドロキシナフトールブルー(HNB)の退色反応はタイロンの添加で加速され,コバルトの高感度分析に利用可能であることを明らかにした.特にタイロンの活性化剤としての効果について検討し,タイロンが共存しない場合はCo-HNB錯体において,1:2錯体の生成が速やかに起こり,この錯体はラジカル生成反応において不活性であるため,HNBの分解反応は見られないと推定された.一方,タイロンが添加されると1:2錯体の生成は抑制され,タイロンが間接的に触媒作用に関与することが明らかにされた.又,タイロンは低濃度でコバルト,マンガンのマスキング剤としても作用する興味ある結果も見いだされた.分析法はコバルトを含む試料溶液をあらかじめpH12.8に調整し,これに緩衝溶液としてCAPS,HNB,タイロンの各溶液を添加する.更に過酸化水素溶液を添加し,反応を開始する.このときpHは過酸化水素により10.8に変化する.反応開始1分後と5分後の吸光度(A1,A5)を650nmで測定し,その比の対数値{ln(A1/A5)}とコバルト濃度の関係から検量線を作成した.更にマンガン定量後にコバルトを定量する逐次定量法も検討された.本法による検量線は0~40ppbの範囲で直線となり,検出限界は0.03ppbであった.
  • 中川 正光, 林 金明, 中釜 達朗, 内山 一美, 保母 敏行
    1999 年 48 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    本法は,アミド化合物を泳動液とし,界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム,ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム,タウロデオキシコール酸ナトリウムを使って,電気的に中性の化合物である,p-アルキルアセトフェノン,ピレン程度の多環芳香族炭水素化合物,ステロイド類のミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)について検討を行った.その結果,ホルムアミドを使用したときには,MEKCが容易に行えた.N-メチルホルムアミドとN,N-ジメチルホルムアミドに対しては界面活性剤が溶解しにくいこと,及びホルムアミドに比べて界面活性剤がミセルを形成しにくいものと推察した.
  • 井出 邦和, 郡 宗幸, 佐藤 幸一, 井上 義則, 大河内 春乃
    1999 年 48 巻 2 号 p. 245-252
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    有機スズ化合物の二置換体であるジブチルスズ(DBT),ジフェニルスズ(DPT)及び一置換体であるモノブチルスズ(MBT),モノフェニルスズ(MPT)の固相抽出法を検討した.有機スズ化合物の回収率の測定には原子吸光法を使用し,超微量有機スズ化合物の測定に,水素化物/気化導入/ICP質量分析法を用いた.固相抽出剤に,親水性のイオン交換型強酸性スルホプロピル基を持つ充填剤(Excelpak SPE ION-C224,ION-CM3,横河アナリティカルシステムズ製),並びに強酸性陽イオン交換樹脂(CK08P,三菱化学製)を用いて,その抽出特性を比較検討した.その結果,交換容量も多く,良好な結果を与えたCK08Pを採用した.海水の代わりに,有機スズ化合物2000μgを含む2.5%塩化ナトリウム試料溶液を通液し,樹脂量,コンディショニング,通液速度,ナトリウムイオン量及びpH等の影響,樹脂中のナトリウムイオン洗浄除去,及び溶離液等の検討を行った.その結果,樹脂量12ml,通液速度5~6ml min-1が良好な結果を与えた.有機スズ化合物の吸着を阻害する樹脂に吸着されたナトリウムイオンの除去には試料溶液125ml通液ごとに0.5M塩酸溶液100mlでの洗浄が有効であった.溶離液(0.5M塩酸-メタノール)14mlで溶離した.DBTは500mlの試料溶液を125ml通液ごとに洗浄してナトリウムイオンを除去し,100%近い回収率を得た.一方,MBTは試料溶液500mlでは62%と低い値を示したが,250mlでは100%近い回収率を得た.超微量濃度のMBT,MPT,DBT及びDPTについて本操作を適用し,水素化物発生/気化導入/ICP-MS法で測定した結果,約100%の回収率を得ることができた.
  • 樋口 慶郎, 井上 亜希子, 坪井 知則, 本水 昌二
    1999 年 48 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ガス透過分離におけるガス透過の長期間の安定性と高効率化,更にガス透過効率の長期間の再現性を向上させた,新しいオンラインガス透過システムを構築した.このシステムでは新しく設計・製作したガス透過ユニットを組み込み,ユニット中を溶液が下方から上方に流れるようにし,気泡の発生を防ぐ工夫がほどこされ,更に測定後にガス透過ユニット内に滞留する溶液を排除するために2個の六方切り替えバルブを内蔵させている.ガスの安定的透過のために温度制御できる小型恒温槽を装着した.この装置中にガス透過ユニット,アンモニウムイオン定量用の反応コイルなどを組み入れ,精密測定の向上を目指した.ガス透過ユニットは,多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブとガラス管からなり,接続には樹脂製フェラル及びO-リングを用い,組み立てを容易にし,デッドボリュームも小さくした.ガス透過ユニット,反応コイル及び試料注入器などを恒温槽の中で一定温度に保つことにより,安定した再現性の良い測定が可能となった.ガス透過ユニット内に滞留する溶液を簡単かつ迅速に強制排除する機能も備えており,測定後はガス透過ユニット中の溶液を除いておくことにより,多孔質チューブの透過性能が長期間維持され,再活性化の操作をすることなく,高いガス透過効率を維持することができた.本システムを用いると,検量線は0~10,0~1.0ppmの範囲で良好な直線性を示し,1時間当たり30試料の分析が可能となった.実際に,河川水中のアンモニウムイオンの定量を行ったところ,インドフェノール誘導体/FIA/吸光光度法による定量値と良く一致し,試料に対する相対標準偏差は0.51,0.83%で,回収率は97~98%と良好であった.
  • 佐藤 公俊, 門田 弥久, 後藤 尚
    1999 年 48 巻 2 号 p. 261-264
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    The separation and preconcentration of trace Cd from water samples for a graphite-furnace AAS determination was studied using silica gel loaded with 4-(2-Pyridylazo)-resorcinol (PAR)/Capriquat. A sample solution of 100700 ml containing Cd was adjusted to pH 11. The solution was then passed through a column packed with 300 mg of PAR/Capriquat-loaded silica gel at a flow rate of 10 ml min-1. The Cd collected on the PAR/Capriquat-loaded silica gel column was eluted with 5 ml of 0.5 M nitric acid, and then determined by GF-AAS. In this method, over 99% of the Cd was preconcentrated at about pH 11. The calibration curve was linear over the range 0.02 to 2.5μg/l of cadmium. The proposed method has been applied to the determination of Cd in seawater samples.
  • 石川 雅章, 松田 りえ子, 林 譲, 四方田 千佳子, 山口 晶, 岩木 和夫, 尾花 裕孝, 佐藤 守俊, 吉田 徹也, 辻 正彦
    1999 年 48 巻 2 号 p. 265-269
    発行日: 1999/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    The limit of detection (LOD) was determined for three p-hydroxybenzoic acid esters at nine laboratories. The result of each laboratory was analyzed by computer software (called TOCO) which predicts the precision and LOD based on the baseline fluctuation without repeated measurements. In every laboratory, the shorter was the retention time of the analytes, the lower was the LOD. In each analyte, the peak-height measurement was more precise than the entire area measurement. The LOD obtained by the laboratories ranged from 0.16 to 30 μg/l. The validity of the TOCO, when applied in practical situations, has been proved.
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