分析化学
Print ISSN : 0525-1931
ジエチルジチオカルバミン酸銅を用いる微量水銀の容量分析法
田中 善正山本 セツ
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1956 年 5 巻 8 号 p. 440-442

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抄録
著者はさきにジエチルジチオカルバミン酸銅のCCl4溶液を水銀塩を含む水溶液と振りまぜるとCCl4層が脱色されることを見出し,この反応を水銀イオンの特異的な新検出法として用い得ることを報告した.その後さらに検討を加えた結果,この反応は定量的に進行し微量の水銀イオンの定量に用いて好結果を得ることが判明したのでここに報告する.本定量法の骨子は試料溶液を分液ロートに取り,ジエチルジチオカルバミン酸銅のCCl4溶液をビュレットより滴加してよく振りまぜ,最早いくら振りまぜてもCCl4層が脱色しなくなるまで滴加を続け,それまでに加えた銅塩溶液のcc数を知ることによって定量するものである.微量の水銀イオンの定量法としてはジチゾン・ジフエニールカルバゾン・ジメチルアミノベンザルロダニン等を用いる比色法が行われているが,比色法は相対誤差が大になるのを免れない.又ジチゾンを用いる容量分析法は水銀が微量の際はジチゾン水銀塩の生成が緩漫となるため直接法は困難であって複雑な間接法によらねばならない.それに反して本新定量法においては比色法で取扱う程度の微量の水銀を直接滴定によって定量するものであって,特殊な機械も必要とせず,短時間に簡易に且つ正確に水銀を定量することが出来た.
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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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