2018 年 73 巻 7 号 p. 463-468
層流がいつ,どのようにして乱流に遷移するのかは,多くの物理学者を悩ませてきた難問である.この難問に対して最近,統計物理学から新たなメスが入れられている.パイプ流やクエット流などのシア流では,層流状態が線形安定でありながら,有限の擾乱により理論よりも遥かに低いレイノルズ数で乱流化し,時空間欠的な乱れが出現する.この層流乱流転移が有向パーコレーションと呼ばれる臨界現象である可能性が指摘され,実験やシミュレーションが盛んに行われている.本稿ではその概要について解説する.