抄録
本研究は, クリーピングベントグラス品種「シーワイツー」の選抜育成過程と夏季生育衰退期における生育諸特性の検定法の確立と諸形質に関してとりまとめたものである. すなわち, ①クリーピングベントグラス品種「シーワイツー」の親栄養系の選抜方法及びその育成過程, さらにダラースポット病耐病性, ブラウンパッチ耐病性及びアントシアニンの発現性など諸形質, ②減農薬, 無農薬管理条件下における夏季の刈り取り量, 芝生品質と葉身の無機成分含量との関係, ③晩秋季の芝生の表面に結露した水滴中の無機成分含量の測定における干渉抑制剤の添加効果の確認, ④殺菌剤無処理及び殺菌剤処理管理下における病害発生程度及び芝生表面に付着した水滴のEC値, 無機成分含量との関係, ⑤夏季の芝生品質, 芝生表面に結露した水滴のEC値と無機成分濃度, 葉身のEL値との関係について検討を行った. その結果, 以下のことが明らかとなった.
①「シーワイツー」の親栄養系の一次選抜は, 無農薬管理下の品種比較圃場で行った. 選抜前年の夏季の猛暑と病害虫の発生のため多くの個体は枯死したが, 生存した株を対象に冬季のアントシアニン発現程度が低い146栄養系統を選抜した. 最終的に, ダラースポット病耐病性及びブラウンパッチ耐病性が高く, 冬季のアントシアニン発現性の低い9栄養系を選抜した. これらにダラースポット耐病性が高く, 冬季のアントシアニン発現性が低いことから既に分離していた1栄養系を加えた10栄養系を用いて, 5~6の親栄養系の組み合わせにより「CY-Ⅰ」, 「CY-Ⅱ」, 「CY-Ⅲ」の3合成系統を育成し, 採種性及び3合成系統のダラースポット病耐病性, ブラウンパッチ耐病性及びアントシアニン発現程度について調査した. 3合成系統は, 供試した既存の対照品種に比べてダラースポット病耐病性が高く, 冬季アントシアニンの発現が低かった. 採種量の多かった「CY-Ⅱ」にダラースポット病耐病性が高い傾向を示した「CY-Ⅲ」の1親栄養系由来の合成第1代を加えた個体集団から合成品種「シーワイツー」を育成した. 育成された「シーワイツー」は, 既存品種である「L-93」, 「ペンA-1」や「ペンクロス」よりもダラースポット病及びブラウンパッチに対する耐病性は高く, 冬季のアントシアニンの発現性は低かった.
②夏季の芝生品質は「シーワイツー」, 「L-93」, 「ペンクロス」の順に高く推移する傾向が認められた. 葉身の無機成分含量は,「シーワイツー」と「L-93」はK含量が多く, 「ペンクロス」はCaとMg含量が多い傾向が認められた. K/Mg比, K/Ca比は, 「シーワイツー」, 「L-93」, 「ペンクロス」の順に高い傾向が認められ, 葉身の無機成分含量及び含量比に品種間の違いが確認された. 夏季の葉身の無機成分含量の品種間の違いは, 芝生品質の品種間の違いと一致した.