Print ISSN : 0016-450X
胃の癌肉腫に就いて
北村 四郎
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1950 年 41 巻 1 号 p. 15-26_1

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抄録

胃の癌肉腫は他の臟器のそれに比し稀で,1904年Queckenstedtが初めて報告してから現在迄僅かに10例を數へるにすぎない。著者は最近癌肉腫と思われる3例(内1例は既に當教室の古川が報告)を經驗したので之迄の諸家の報告と合せ檢討し,ここに報告する。著者の例は何れも一方には圓形乃至紡錘形細胞肉腫と他方には髄樣癌の像が認められ,兩者は實質と間質の關係を示さず,自然に何時の間にか移行している。此の點よりすれば3例共に一つの源基細胞に由來する腫瘍と考えられ,R.Meyerの分類に從へばCombinationstumorに屬する。唯3例の内2例には肉腫内にも印環細胞形成が認められるので,或いは肉腫樣構造を示す癌腫と考えられぬ事もない。然し此の肉腫内に於ても嗜銀性纎維は腫瘍細胞と密接な關係を有し,吾々が平常肉腫と呼んでいる像に完全に一致しているので,3例共に癌肉腫と判斷するのが至當と考える。尚著者は之迄に報告された癌肉腫の所見を基礎として肉眼的には胃壁の肥厚の状態により之を瀰蔓性肥厚をなすものと,胃壁の内外に夫々發育する型に大別し,組織學的には純形態學的な見地から分類を試みた。

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