Print ISSN : 0016-450X
前立腺癌に膀胱癌を併発せる一重複惡性腫瘍例
伊藤 秦二
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1952 年 43 巻 1 号 p. 45-48_2

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抄録

患者は67才男子。終末時排尿痛,陰莖,会陰部等に枚散する下腹部痛を主訴として來院。血尿,尿線異常等はこれを認めなかった。直腸診で前立腺右葉は硬靱に触れ,しかも余り増大しておらず,癌腫を疑わしめ,更に膀胱鏡的に膀胱頂部にも腫瘍を認めた。膀胱全剔除術により膀胱,前立腺,精嚢を一塊として剔出し両側尿管をS状腸に吻合した。剔除標本を病理学的に檢査して見た所,前立線右葉の硬靱な部分は明瞭な腺癌の像を示し,膀胱頂部の小指頭大の腫瘍は單純癌(移行細胞癌)であった。更に標本を廣範囲に亘り檢索した結果,後者では前癌性変化に陥った粘膜上皮群からの移行像を証明し,前立腺癌とは明かに別個に無関係に發生していることを確め得た。本症例の如き前立腺癌に膀胱癌の併發例は本邦においては未だその報告をみていない。

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