Print ISSN : 0016-450X
癌の細胞学的研究
第V報.吉田肉腫の異種移植,特に腫瘍細胞の行動について
吉田 俊秀
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1952 年 43 巻 1 号 p. 35-43

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抄録

吉田肉腫を2頭のクマネズミ(Rattus rattus),4頭のハツカネズミ(Mus musculus),1頭のヒメネズミ(Apodemus geisha),1頭のヱゾヤチネズミ(Clethrionomys bedfordiae),3頭のテンヂクネズミ(Cavia cabaya),2頭のシマリス(Eutamias asiaticus lineatus),2頭のウサギ(Lupus cuniculus domesticus),1頭のネコ(Felis domestica),1羽のニワトリ(Gallus gallus domesticus)の腹腔内に移植して,腫瘍細胞の行動を追求した。
異種の動物は,いかなる種類でも吉田肉腫によって死亡することはない。しかしながら,クマネズミ,ハツカネズミ,ヒメネズミ,ヱゾヤチネズミ及びテンジクネズミの5種の動物に対しては,ある一定の期間だけ,あたかも同種移植(シロネズミへの移植)の場合の如く,腫瘍細胞は分裂増殖を示した。その他の種類の動物における腫瘍細胞の行動等から,一般的に吉田肉腫細胞の異種動物に対する親和性は,動物の類縁関係と密接な関係のあることがわかった。
腫瘍細胞の分裂増殖をみた5種の動物において,細胞分裂の出現頻度を調べてみた。一般的にいうと,分裂像の出現率は同種移植よりも異種移植の場合の方が高頻度となって表われている。これは異種移植の場合の方が中期核分裂像の出現率が高いためであった。
次に腫瘍胞細の異常性を比較研究した。一般に分裂型細胞の出現率は同種移植の場合の方が高く,これに反して,異常型は異種移植の方が高くなっている。崩壞型は動物の種類によって夫々差異がある。これら異常性の出現率を移植後の経過日数によって調べてみると,その変化の傾向は異種移植及び同種移植の両者の場合において著しい差異はない。即ち,分裂型は初期から中期にかけて高く,後期において著しく低くなっている。これに反して崩壞型は後期に著しく高くなっている。異常型は日によって余り顯著なる上下はない。

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