Print ISSN : 0016-450X
アミノ酸と癌組織によるトキソホルモンの合成
福岡 文子中原 和郎
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1953 年 44 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

われわれは癌の特殊毒性物質トキソホルモンは一種のポリペプチードであろうと推定しているが,今回担癌動物に蛋白水解物,あるいはアミノ酸混合物を注射すると,その癌組織のトキソホルモン含有量が著しく増加することを見出した。必要なアミノ酸はアラニン,プロリン,アスパラギン酸,アルギニン,フェニルアラニン,リヂン,ロイシン及びグルタミン酸の8種類で,トキソホルモン粗製標品の水解物中にはこの外になお多くのアミノ酸が検出されているが,他のアミノ酸は無関係である。
この所見から,これ等8種のアミノ酸が癌細胞によるトキソホルモンの合成に特殊な役割を演ずるものであることは疑ない。現在のところ,われわれはこれ等8種のアミノ酸がトキソホルモンの主要な構成物質であり,それを余分に供給することによつて癌細胞が多量のトキソホルモンを合成するものと解釈している。

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