Print ISSN : 0016-450X
44 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 福岡 文子, 中原 和郎
    1953 年 44 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1953/03/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは癌の特殊毒性物質トキソホルモンは一種のポリペプチードであろうと推定しているが,今回担癌動物に蛋白水解物,あるいはアミノ酸混合物を注射すると,その癌組織のトキソホルモン含有量が著しく増加することを見出した。必要なアミノ酸はアラニン,プロリン,アスパラギン酸,アルギニン,フェニルアラニン,リヂン,ロイシン及びグルタミン酸の8種類で,トキソホルモン粗製標品の水解物中にはこの外になお多くのアミノ酸が検出されているが,他のアミノ酸は無関係である。
    この所見から,これ等8種のアミノ酸が癌細胞によるトキソホルモンの合成に特殊な役割を演ずるものであることは疑ない。現在のところ,われわれはこれ等8種のアミノ酸がトキソホルモンの主要な構成物質であり,それを余分に供給することによつて癌細胞が多量のトキソホルモンを合成するものと解釈している。
  • 福岡 文子, 中原 和郎
    1953 年 44 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 1953/03/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    佐々木•吉田はo-Aminoazotoluene飼与による肝癌生成実験において,その位置異性体p-Aminoazotolueneが同じ要約の下に"発癌性の片鱗をも示さない"ことを報告した。われわれはこれら両異性体の生物学的作用を比較検討することによつて,肝癌生成の生化学的機転に関し有意義な手懸りが得られるかと考えたのであるが,本文記述のように,o-Aminoazotolueneは相当大量肝臟に証明されるに反し,p-Aminoazotolueneは大部分が脂肪組織に沈著して美しい脂肪組織の生体染色を示すが,肝臟には確実に証明し得ないことが判明した。すなはち,p-Aminoazotolueneの"非癌原性"は,その十分な量が肝細胞に作用し得ないためであると説明することが出来る。物質に癌原性が有るかないかの問題ではなく,組織親和性の差異に由る食い違いである。
    この研究は終戦前に行われ,結果は予報的に既に日本文で発表したものであるが,今日まで同様の所見が他所から報告されたことはないようである。
  • 岩鶴 龍三, 加藤 績, 由谷 勇雄
    1953 年 44 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 1953/03/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    K.I.K.因子はトリクロール醋酸によつて沈澱せしめ得ない。本因子は低級なペプチッドと考えられる。
    ペーパークロマトグラムで胃癌胃液のメタノールによる沈澱と,トリクロール醋酸を加えた際の上澄液とは同一のスポットを現わし,トリクロール醋酸による沈澱は何等のスポットをも生じない。
  • 熱海 明
    1953 年 44 巻 1 号 p. 21-32_2
    発行日: 1953/03/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高等動物細胞は主として有糸分裂によつて殖えるが,無糸分裂によつても殖えると言われる。原虫においては(あるいは細菌においても)無糸分裂による細胞体の増加は事実認められるが,高等動物の細胞の場合にも果して事実であるか否かの問題を追求して,熱海は吉田肉腫を用い,無糸分裂の研究をば次の二つの方法によつて行つた。すなわち第一は腫瘍移植後動物が死亡するまでの毎日の腫瘍腹水塗抹染色標本の逐時的観察である。第二は位相差顕微鏡を用いて腫瘍増殖末期腹水中の腫瘍細胞殊に核の生態観察である。塗抹標本観察によつて得た所見は。
    (1) 無糸分裂では核が分れる事があつても細胞体は分れない。
    (2) 異常核形を亜鈴形,分葉形,突起形,一方側縊れの四種に分類を試みると,亜鈴形においては核が無糸分裂的に分断すると確認されるが,他の形のものから核が分断して多核となる事は確認できない。
    又異常形核を有する細胞の胞体直径を計測して見ると,亜鈴形核を有する細胞のみが一個の核を有する静止形腫瘍細胞よりも有意義の差を以つて大きい。
    (3) 腫瘍増殖の初期には有糸分裂像が多くて無糸分裂像(上記の四つの核形)が少く,末期になると逆に有糸分裂像が減つて無糸分裂像が殖えてくる。
    (4) 末期に異常の核形を有する細胞が多くなつても,それ程多核細胞は殖えない。次に生態観察によつて得た所見は。
    (1) 静止核の両側が縊れてすなわち亜鈴形を呈して核が二分する事実が確認された。(一例)
    (2) 亜鈴形以外の異常の核形では縊れた状態を長く続けていて容易に分れない。(分葉形:四例。一方側縊れ:二例。)亜鈴形でも縊れが長く続いていて観察中には二分しなかつたものがある。(二例)
    (3) 核の縊れは必ずしも分れる方向にのめ進行するのではない。逆に縊れが浅くなつたり,逆戻りする事もある。(一例)
    (4) 無糸分裂で核は殖えるが,細胞の数は殖えない事は生態観察でも確認された。
    以上の観察から無糸分裂を綜合的に考察して見ると,無糸分裂による細胞数の増加というものは存在しないと結論される。無糸分裂なる現象は細胞体の分裂を伴はない核のみの分裂及び核の変形の一種である。亜鈴形核を有する細胞体は一個の静止核を有する細胞体より大きいが,分葉形•突起形•一方側縊れの核の場合には大きいとは言えない。且つ亜鈴形の場合は核が分れ得るのであるが,他の三者の場合は完全に分れる事実が確認出来ない。すなわち亜鈴形核は後三者とは多分に異る点があり,直接分裂型として認める事が出来るが,後三者は核の分裂型とは認め難く,生活条件による核の変形と考えるべきであろう。要するに所謂無糸分裂像には進行性あるいは積極的の意味は認め難く,退行性の現象とみるべきである。
  • 村上 忠重, 中村 曉史, 鈴木 武松
    1953 年 44 巻 1 号 p. 33-38_2
    発行日: 1953/03/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大きな慢性潰瘍の辺縁の一部が癌化している切除胃において,その癌化部を連続切片によつて詳細に調べた結果380×540×1000μの独立した小腺癌の全貌を明らかにすることが出来た。この癌は潰瘍縁を被う胃小窩小皮から,その場で発生した腺癌であるとみなすことが出来たので,先に報告した独立した充実癌の発生像と対比しつつ,腺癌の組織発生について,簡単な考察を試みた。
  • 第二報
    牧野 佐二郎, 田中 達也
    1953 年 44 巻 1 号 p. 39-46_1
    発行日: 1953/03/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    2ccの0.25M CaCl2,1ccの0.125M AlCl3及び2% H2O2を,移植6日目の吉田肉腫ならびにMTK肉腫ネズミの腹腔に注射して,腫瘍細胞への影響を細胞学的に観察した。この3種の化学薬品は例外なく,まず腫瘍細胞の細胞質を破壊し,ついで裸出した核が退化を起す,大部分の腫瘍細胞が破壊されるので,肉腫の成長はここで一時的に退行するが,いずれの場合においても,一群の母系細胞は薬品によつて破壊されるとなく生きのびるので,やがてそれらの分裂増殖によつて,再び腹水肉腫が形成される。如何なる機構によつて母系細胞のある者が薬品の破壊をまぬかれるか,これは癌の化学療法においてまず第一に研究しなければならぬ問題である。
  • A STUDY OF THE REGENERATION OF THE MUCOUS MEMBRANE OF THE STOMACH WITH SPECIAL REFERENCE TO ITS MALIGNANT TRANSFORMATION
    MASARU KURU
    1953 年 44 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1953/03/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
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