Print ISSN : 0016-450X
o-Aminoazotolueneとその"非癌原性異性体"p-Aminoazotolueneとの組織親和性の差異
福岡 文子中原 和郎
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1953 年 44 巻 1 号 p. 13-16

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抄録

佐々木•吉田はo-Aminoazotoluene飼与による肝癌生成実験において,その位置異性体p-Aminoazotolueneが同じ要約の下に"発癌性の片鱗をも示さない"ことを報告した。われわれはこれら両異性体の生物学的作用を比較検討することによつて,肝癌生成の生化学的機転に関し有意義な手懸りが得られるかと考えたのであるが,本文記述のように,o-Aminoazotolueneは相当大量肝臟に証明されるに反し,p-Aminoazotolueneは大部分が脂肪組織に沈著して美しい脂肪組織の生体染色を示すが,肝臟には確実に証明し得ないことが判明した。すなはち,p-Aminoazotolueneの"非癌原性"は,その十分な量が肝細胞に作用し得ないためであると説明することが出来る。物質に癌原性が有るかないかの問題ではなく,組織親和性の差異に由る食い違いである。
この研究は終戦前に行われ,結果は予報的に既に日本文で発表したものであるが,今日まで同様の所見が他所から報告されたことはないようである。

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© 日本癌学会
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