Print ISSN : 0016-450X
クロショウジョバエにおけるメラニン性腫瘍
牧野 佐二郎金久 武晴
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1954 年 45 巻 1 号 p. 17-22_1

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抄録

1. 猩々蠅の腫瘍の研究は, 現在まで, 黄色猩々蠅における種々なる腫瘍系統を用いて行われて来た。著者は1950年に, 北海道札幌市郊外円山において採集した猩々蠅の集団中より黒猩々蠅のメラニン様腫瘍を見出したので, これについて形態学的及び遺伝学的の研究を始めた。
2. この腫瘍は良性のもので, 大きさや形はさまざまである。主として中胸背部, 小循板部, 側胸部, 及び頭部に現われる。また, 外部的には羽化後10日から20日の間に出現する。この点において“tuh”を除く黄色猩々蠅の各腫瘍系統にみられるものとは異つている。また, 腫瘍はメラニン様色素の集成体として現われるもので, この点は“tuh”とも異つている。なお, この腫瘍を, 表現度に従つて一応便宜的に5型に区別した (Figs. 1, 2, 3, 4, 5) が, いずれも最後には消失するかあるいは痕跡としてのみ残存する。
3. 4代にわたる自家交配を行つた結果, 腫瘍の発現率が41%から91%まで, かなり急激に増昇することが判つた。また, 腫瘍と出石及び大津の二野生型との間の相互交配の結果から, 腫瘍の発現に毋性の影響が働いていることを知つた。

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