Print ISSN : 0016-450X
武田肉腫細胞の核学的特異性
吉田 俊秀
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1954 年 45 巻 1 号 p. 9-15_3

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抄録

武田肉腫とはラットにおける腹水性腫瘍の一系統である。この腫瘍は四倍性の細胞が多く, 観察された (A) 固体では83.4%, (B) 個体では70.5%が四倍性であつた。これらの結果から, 武田肉腫の種族細胞は四倍性であると考えられる。四倍性細胞の染色体数を詳細に調べてみると, ラットの染色体数の倍数である84前後のものが最も多い。次に各染色体の形態を詳細に調べてみたところ, 通常の棒状染色体の外に, 小型のVあるいはJ字形染色体が19から24個, 大型のV字形染色体が1個あるいは2個観察され, しかも核型分析をされた多くの細胞には大型のJ字形染色体が1個観察された。大型のJ字形染色体は正常マウスの体細胞や他の二倍性腹水腫瘍 (例えば吉田肉腫, MTK肉腫等) には観察されない, 武田肉腫の種族細胞における核学的特異性であると考えられた。

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