Print ISSN : 0016-450X
肝癌生成過程における白鼠の血清並に肝の Phosphatase および Esterase について
一井 昭五森 和雄大橋 望彦
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1954 年 45 巻 1 号 p. 33-39

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抄録

2-Acetylaminofluorene (AAF) を動物に与えて肝癌を生成する過程における白鼠血清および肝の Phosphatase と Esterase の活性度をしらべた。この際, p-Dimethylaminoazobenzene (DAB)による肝癌を前者の場合と比較した。
実験結果は表示の如くであるが, 総括的にいえば, AAFあるいはDAB投与による肝癌生成過程におけるそれぞれの白鼠の血清と肝の Phosphatase, Esterase 作用は, 肝病変に応じ殆ど同じようであつた。
すなわち肝癌生成過程における白鼠の血清 Phosphatase は試験された範囲のpH域 (pH 4,7ならびに9) では対照動物に比べて顕著な差がみとめられなかつた。肝組織 Phosphatase はpH 4の場合には対照に比べて大差なく, しかしpH 9の場合には肝癌 Phosphatase が著しく増量した。このことはDAB投与白鼠についてなされた従来の諸報告とほぼ一致している。
血清 Esterase 作用はAAFあるいはDABを与えた動物では対照に比してやや強く, 殊にAAF肝癌動物ではかなり高位を示した。しかし肝組織 Esterase 作用は病変の進行に関係なく不変で, さらに肝癌では半減することがみとめられた。

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